前回の記事では、資産5000万円・生活費22万円で60歳退職が可能かシミュレーションしました。
ただ、あのシミュレーションには含めていなかった大きな支出があります。
それが 退職後の社会保険料と税金 です。
会社員時代は給与天引きだったので意識しにくいですが、退職すると すべて自分で支払う ことになります。
しかも退職初年度は、前年の収入ベースで計算されるため 想像以上に高額 になります。
今回は、退職後にかかる社会保険・税金を項目ごとに整理し、「年間いくら必要なのか」を具体的に試算してみました。
- 定年退職後の保険料や税金がいくらか不安
- 退職後の「手取り」を正確に把握したい
- 生活費以外にどれくらい余分に必要か知りたい
という方の参考になればうれしいです。
退職後の前提条件
今回も、これまでの記事と同じ前提で計算します。
- 年齢:55歳(退職時60歳を想定)
- 退職前の年収:約500万円
- 勤続年数:30年
- 独身(配偶者なし)
- 愛知県在住
この条件で、退職初年度(1年目)にかかるコストを整理していきます。
健康保険|任意継続と国保、どちらが得か
退職すると、会社の健康保険から外れます。
選択肢は主に2つです。
- 任意継続(退職後2年間、元の健康保険に加入し続ける)
- 国民健康保険(市区町村の保険に加入)
任意継続の場合
在職中は会社と折半だった保険料を、全額自己負担 します。
ただし、標準報酬月額には 上限(32万円) があるため、年収が高くても頭打ちになります。
協会けんぽ・愛知県の保険料率(介護保険込み)で計算すると:
👉 月額:約3.7万円(年間:約44万円)
独身の場合、扶養家族の保険料メリットがないため、国保との差は小さくなります。
国民健康保険の場合
前年の所得をベースに計算されるため、退職初年度は高額 になります。
年収500万円・愛知県の場合の目安:
👉 年間:約40万円(月額:約3.3万円)
ただし2年目以降は収入減に応じて 大幅に下がります(年間10万円程度まで)。
どちらを選ぶべきか
独身で扶養家族がいない場合、1年目から国保の方が安くなる ケースが多いです。
年収500万円・愛知県の条件では、国保が年間約4万円ほど安くなります。
ただし自治体によって差があるので、退職前に 市区町村の窓口で試算してもらう のが確実です。
2022年の制度改正で、任意継続は いつでも脱退できる ようになったので、まず任意継続に入っておいて、国保の金額を確認してから切り替えるという方法もあります。
住民税|退職翌年の”重い請求”に備える
住民税は 前年の所得 に基づいて、翌年6月から課税されます。
つまり、退職して収入がゼロになっても、在職時の年収に対する住民税 がまるまる請求されます。
退職前の年収500万円の場合:
👉 年間:約25万円(月額:約2.1万円)
これは退職初年度のみの負担です。
退職翌々年は収入減に応じて大幅に下がります。
正直に言うと、この「退職翌年の住民税」が一番見落としやすい隠れコストだと感じています。
退職金の税金|退職所得控除で大きく軽減される
退職金には 退職所得控除 という大きな非課税枠があります。
勤続30年の場合の控除額:
800万円 + 70万円 × 10年
= 1,500万円
退職金が2,000万円なら、課税される退職所得は:
(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2
= 250万円
この250万円に対して:
- 所得税:約15.3万円
- 住民税:約25万円
退職金2,000万円に対して税金は 約40万円 。控除が大きいので、手取りへの影響は限定的です。
2026年からの注意点
iDeCoの一時金と退職金の受取間隔に関する調整期間が 5年 → 10年に延長 されました。
iDeCoを先に受け取ると、10年以内に退職金を受け取った場合に控除額が減る可能性があります。
👉 受取タイミングの戦略がより重要 になっています。
年金保険料|60歳以降は「任意加入」の選択
60歳で退職すると、国民年金の強制加入は終了します。
ただし、納付期間が40年(480月)に満たない場合は、65歳まで任意加入 できます。
勤続30年の場合、大学卒業後の就職であれば納付期間は 約38年(456月) 。40年に満たないため、任意加入の対象になります。
- 保険料:月額17,510円(年間約21万円)
- 増える年金:1年加入で 年額約2万円 アップ
- 損益分岐点:約9年(75歳頃)で元が取れる
75歳以上長生きする前提なら、加入する価値はあります。
雇用保険(失業給付)|受給できる金額と注意点
60歳の定年退職でも、ハローワークで求職活動をすれば 失業給付を受給 できます。
勤続20年以上・自己都合退職の場合:
- 給付日数:150日
- 基本手当日額:約4,800〜5,200円
- 2025年4月から給付制限期間が 2ヶ月 → 1ヶ月に短縮
👉 総額:約72〜78万円
ただし注意点があります。
60〜64歳で失業給付を受給すると、特別支給の老齢厚生年金が全額停止 されます。
どちらが有利か、事前に比較しておく必要があります。
まとめ|退職初年度の”隠れコスト”は年間約86万円
退職前年収500万円、独身、愛知県在住の場合の退職初年度の概算です。
- 健康保険(国保):約40万円
- 住民税:約25万円
- 国民年金(任意加入する場合):約21万円
- 合計:約86万円
生活費22万円 × 12ヶ月 = 264万円に加えて、
社会保険・税金で 約86万円 が上乗せされます。
退職初年度だけで見ると、実質的な年間支出は 約350万円 になります。
前回のシミュレーションでは生活費264万円で計算していましたが、初年度はこの隠れコストを考慮しておく必要があります。
2年目以降は住民税の減少や国保の大幅な値下がりで 負担は半分以下 になるので、最も厳しいのは退職1年目です。
感覚ではなく、数字で把握しておくことで、「退職しても大丈夫」という安心感につながると考えています。

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