死後事務委任契約は30万円から|独身・子なしが遺言の次に備えること

前回の記事「デジタル遺言はまだ使えない|独身・子なしが自筆証書遺言で気をつけること」で、遺言さえ書いておけば、独身・子なしでも資産の行き先は自分で決められることが分かりました。

ただし遺言でカバーできる範囲は、実は思ったより狭いです。

葬儀の手配や家財の処分といった「死後の事務」、認知症などで判断能力が落ちたときの「生前の財産管理」は、遺言の対象外です。

今回は、その2つに備える仕組み——死後事務委任契約任意後見契約——を、費用相場を中心に整理します。

  • 独身・子なしで、遺言だけでは不安が残る方
  • 死後の葬儀・納骨・行政手続きを誰に頼むか決めていない方
  • 認知症など判断能力の低下に備えたいと思っている方

という方の参考になればうれしいです。

前提条件

  • 55歳、年収約500万円、勤続30年、独身、愛知県在住(賃貸)
  • 資産約5,000万円
  • 両親はすでに死亡、兄弟姉妹が1人(疎遠)

遺言では対応できない「死後の事務」と「生前の判断能力」

前回の記事のまとめで触れた通り、遺言は「死後、誰にどの財産を渡すか」だけを決める文書です。

  • 葬儀・納骨をどうするか
  • 家財道具や賃貸住宅の解約手続き
  • 携帯電話やサブスクなど「デジタル遺品」の解約
  • 認知症などで判断能力が落ちたときの、生前の財産管理

これらは遺言に書いても法的な効力を持ちません。別の契約を用意しておく必要があります。

死後事務委任契約――葬儀・納骨・行政手続きを託す

死後事務委任契約は、葬儀・納骨・行政手続き・デジタル遺品整理など、死後の事務を第三者(専門家や信頼できる友人)に委任する契約です。

費用は「契約書作成」「死後の実行報酬」「実費」の3段階

  • 契約書作成費用:数万円〜30万円程度
  • 死後の事務を実行する受任者報酬:30万円〜100万円程度
  • 葬儀・納骨などの実費:別途

公正証書にする場合は、公証役場の手数料(1万1,000円〜1万4,000円程度)と証人2名分の費用(3万3,000円程度)が上乗せされます。

精算型と預託型で、支払うタイミングが違う

死後の事務にかかる費用は、亡くなってから相続財産や実費から精算する「精算型」と、契約時にあらかじめ70万円〜150万円程度を預けておく「預託型」があります。

預託型は受任者にとって取りはぐれのリスクが低い分、依頼する側は生前にまとまった資金を用意する必要があります。

👉 専門家に死後事務を任せる場合、契約から実行までトータルで50万円〜100万円程度は見ておく必要がありそうです。 資産5,000万円のうち数%が、死後の事務だけで動く計算になります。

任意後見契約――判断能力が落ちたときの財産管理を託す

もう一つ備えておきたいのが、認知症などで判断能力が低下した場合の財産管理です。

任意後見契約は、判断能力があるうちに「将来、判断能力が落ちたら誰にどう財産管理を任せるか」を公正証書で決めておく契約です。

契約時の費用

  • 公証役場の手数料:1契約13,000円程度(書類が3枚を超えると1枚300円加算)
  • 専門家に契約書作成のサポートを依頼する場合:5万円〜11万円程度

初期費用としては、自分で手続きすれば2〜3万円程度、専門家に任せると十数万円程度が目安です。

発効後は継続費用がかかる

任意後見契約は、契約しただけでは動きません。実際に判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で発効します。

発効後は、任意後見人への報酬と、任意後見監督人への報酬が継続的に発生します。月数万円程度が一般的ですが、亡くなるまでの年数によっては総額が数百万円規模になることもあります。

財産管理委任契約という「軽量版」もある

任意後見契約は判断能力が低下しないと発効しません。一方、財産管理委任契約は公正証書が不要で、判断能力があるうちから財産管理を任せられます。

ただし財産管理委任契約には、任意後見監督人のような公的なチェック機関がありません。信頼できる相手かどうかが、より重要になります。

疎遠な兄弟姉妹に判断を委ねたくない場合、まず財産管理委任契約で身の回りの管理を任せつつ、判断能力低下に備えて任意後見契約もセットで結んでおく、という組み合わせが現実的です。

iDeCoの受取人に友人を指定すると、非課税枠が使えない

前回の記事で、遺言なら友人への遺贈も可能で、税金面でも生前贈与より有利だという話をしました。

ただしiDeCo(個人型確定拠出年金)の死亡一時金は、少し事情が違います。

iDeCoの死亡一時金は「みなし相続財産」として相続税の対象になり、死亡退職金と同じ非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えます。

👉 ただしこの非課税枠は、受け取る人が相続人である場合に限られます。友人など相続人以外を受取人に指定していると、非課税枠は使えず、死亡一時金の全額が相続税の課税対象になります(相続人でない友人への遺贈と同様、2割加算の対象にもなります)。

法定相続人が兄1人のケースなら、非課税枠は500万円。iDeCoの受取人を兄のままにしておくか、友人にするかで、税負担が変わってくる点は覚えておきたいところです。

受取人の指定・変更は、加入している金融機関(運営管理機関)への届出で行えます。遺言とは別の手続きなので、遺言を書いたタイミングで受取人指定も一緒に見直しておくと安心です。

まとめ|遺言の次に検討したい3つの備え

  • 遺言は「死後、誰にどの財産を渡すか」しか決められない
  • 葬儀・納骨・行政手続きなど死後の事務を託すなら、死後事務委任契約(費用目安:契約時数万円〜30万円+実行報酬30万円〜100万円)
  • 判断能力低下への備えなら、任意後見契約(初期費用十数万円+発効後の継続報酬)。判断能力があるうちから使いたいなら財産管理委任契約も選択肢
  • iDeCoの死亡一時金は、相続人以外を受取人にすると非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えない点に注意

正直に言うと、任意後見契約の発効後の継続費用は、想像していたより長期戦になりそうだと感じました。

独身・子なしで、遺言以外の備えも考え始めている方の参考になればうれしいです。

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