ここ数か月、遺言やエンディングノートなど、終活まわりのことばかり書いてきました。今回は運用の話に戻ります。
私は証券口座を2つ持っています。楽天証券とSBI証券です。
はじめは「管理が面倒だな」と思っていました。いまは逆で、分けてあるから続いていると感じています。
「長期の積立は見ないほうがいい」とよく言われます。私もそう思います。ただ、どうすれば見ないでいられるのかを書いた記事は、あまり見かけません。意志の話で終わってしまうからだと思います。
意志では無理でした。だから仕組みにしました。
- 証券口座を複数持つべきか迷っている
- 長期の積立を途中で売ってしまった経験がある
- 相場が下がるたびに口座を開いてしまう
- 50代で、退職までの残り時間を意識し始めた
という方の参考になればうれしいです。
私の前提
記事の内容は、この前提での話です。
- 年齢:55歳(60歳退職を想定)、独身・子どもなし
- 楽天証券:iDeCoとNISAの積立。ほったらかし用
- SBI証券:個別株の売買。見る用
- NISAつみたて投資枠:月10万円(楽天カードのクレカ積立)
- NISA成長投資枠:年初に240万円
- 合計で年360万円。NISAの年間上限いっぱい
数字は私の実際の金額です。同じ金額にする必要はまったくありません。
口座を2つに分けている
まず、どう使い分けているかを書きます。難しいことはしていません。役割を決めて、それ以外に使わないというだけです。
分けると管理が増えるように見えますが、実際には考えることが減りました。
楽天証券はほったらかし用
楽天証券には、iDeCoとNISAの積立を置いています。
毎月決まった額が自動で買われるだけなので、私がすることは何もありません。
実際、口座をほとんど開きません。年に数回、残高を確認する程度です。相場が荒れた月でも、見ないので何も起きません。
SBI証券は売買用
SBI証券では個別株を買っています。高配当株が中心です。
こちらは頻繁に見ます。株価も配当も確認しますし、買い増すかどうかも考えます。
同じ「投資」でも、やっていることはまったく違います。片方は何もしないのが正解で、もう片方は考えるのが前提です。
分けた理由は「見ないため」
| 楽天証券 | SBI証券 | |
|---|---|---|
| 置いているもの | iDeCo・NISAの積立 | 個別株 |
| やること | 何もしない | 調べる・売買する |
| 口座を開く頻度 | 年に数回 | 頻繁 |
| 相場が荒れたとき | 見ない | 見る |
👉 分けた理由はひとつで、長期の積立を「見ないで済む場所」に隔離したかったからです。
意志ではなく仕組みで守る
ここからが本題です。なぜ隔離する必要があったのか。
結論から言うと、同じ画面に並んでいると見てしまうからでした。
同じ画面に並ぶと、見てしまう
もし1つの口座に全部入れていたら、どうなるか。
個別株の値動きを確認するたびに、積立の評価額も目に入ります。見ようと思っていなくても、同じ画面にあるからです。
そして相場が下がっている月には、積立のマイナスも一緒に表示されます。
見れば考えます。考えれば、一度止めようかという発想が出てきます。
50代には、やめる理由がいくらでもある
20代や30代なら「どうせ30年後の話だから」と割り切れたかもしれません。
55歳だと事情が違います。退職までの残りが5年しかありません。
暴落したときに「回復を待つ時間が足りないのでは」と考えてしまう。その理屈には一定の説得力があるので、自分を説得できてしまいます。ここが危ないところです。
QQQを55歳から買うかどうかを考えたときにも感じましたが、年齢が上がるほど「やめる理由」はもっともらしくなります。
だから物理的に分けた
意志の力でどうにかしようとは思いませんでした。たぶん無理だからです。
代わりにしたのが、積立を別の口座に置いて、そもそも視界に入らないようにすることでした。
- 個別株を見たいときは、SBI証券を開く
- 楽天証券は開かない。開く用事がない
👉 見ないと決めるのではなく、見る理由をなくす。これだけで、ずいぶん楽になりました。
ログインの手間すら、ここでは役に立っています。わざわざ別のIDでログインしないと見られないので、なんとなく開くということが起きません。
楽天証券を選んだ理由は、実はポイントだった
ここからは、正直に書いておきたいことです。
口座を分けた話はもっともらしく聞こえますが、楽天証券を選んだ動機自体は、そんなに立派ではありませんでした。
楽天銀行と楽天カードを使っていた流れ
当時すでに楽天銀行と楽天カードを使っていたので、証券口座もその流れで開きました。
理由はポイントが貯まりそうだったからです。それ以上の比較検討はしていません。
iDeCoでは、ポイントはほとんど貯まらない
ところが後から分かったことがあります。
iDeCoの掛金は口座振替しか選べません。クレジットカード払いも電子マネーも使えません。国民年金基金連合会が運営する公的な制度なので、支払い方法が限られています。
私はiDeCoの掛金を楽天銀行から引き落としています。楽天銀行のハッピープログラムに登録していると、口座振替1回につき最大3ポイントが付きます。ただし引き落としは月1回なので、
3ポイント × 12回 = 年間で最大36ポイント
です。
👉 ポイント目的で選んだつもりでしたが、iDeCoに関してはほぼ意味がありませんでした。
効いていたのは運営管理手数料0円のほう
ではまったくの無駄だったかというと、そうでもありませんでした。
iDeCoの手数料には、どこを選んでも同じ部分と、金融機関ごとに違う部分があります。
| 手数料 | 金額 | 金融機関で変わるか |
|---|---|---|
| 加入時 | 2,829円 | 変わらない |
| 毎月(国民年金基金連合会・信託銀行) | 171円 | 変わらない |
| 運営管理手数料 | 0円〜数百円 | 変わる |
つまり比較する意味があるのは運営管理手数料だけです。
楽天証券はここが0円でした。残高や積立額、加入期間にかかわらず無料です。
ポイントで選んでも手数料で選んでも、結論は同じでした。結果的に損はしていなかったという話です。
2027年1月から共通部分が上がる
ひとつ、これから変わる話を付け加えます。
国民年金基金連合会の手数料が、2027年1月26日の口座引落し分から、1回105円から月120円に変わります。合計では月171円から186円になります。
どの金融機関を選んでも同じように上がるので、比較には影響しません。
ただし注意点があります。これまでは掛金を拠出した月だけ手数料がかかっていました。改定後は、年に1回まとめて拠出している人も拠出月数分を負担する形になります。毎月拠出している私のような場合は年1,440円ですが、まとめて拠出している人は実質的な負担増になります。
楽天キャッシュ経由をやめたが、損はしていなかった
もうひとつ、自分でも誤解していた話があります。
以前は楽天キャッシュを経由して積立をしていました。いまはやめています。やめたとき、ポイントを捨てることになるんだろうなと思っていました。
計算してみたら、違いました。
かつての経路
以前はこうでした。
楽天銀行 → 楽天カード → 楽天キャッシュ → 楽天証券
経由が多いぶん、使える枠は増えます。ただ、どこで何が起きているのか自分でも把握しきれなくなり、シンプルにしたくてやめました。
純粋に「分かりにくかったから」という理由です。損得は計算していませんでした。
月10万円はカード枠に収まっていた
楽天証券のポイント還元は、こうなっています。
| 積立の方法 | 上限 | 還元率(楽天カード一般) |
|---|---|---|
| 楽天カードのクレカ積立 | 月10万円 | 0.5% |
| 楽天キャッシュ | 月5万円 | 0.5% |
| 併用した場合 | 月15万円 | — |
私のつみたて投資枠は月10万円です。
👉 カードの枠だけでちょうど収まります。楽天キャッシュを使う余地が、そもそもありませんでした。
併用が意味を持つのは、月10万円を超えて積み立てる場合だけです。
年6,000ポイントは、いまも取れている
実際の還元はこうなります。
月10万円 × 0.5% × 12か月 = 年6,000ポイント
クレカ積立はやめていないので、これはいまも受け取っています。
👉 捨てたと思っていたポイントは、実は捨てていませんでした。
分かりやすさを選んだつもりが、結果的に何も失っていなかった、ということになります。もっとも、それを確認したのは今回が初めてです。数年間、なんとなく損した気分のままでした。
成長投資枠だけは年初に一括で入れている
積立の話をしてきましたが、ひとつだけ例外があります。
NISAの成長投資枠240万円は、年初にまとめて入れています。
年初一括にはポイントがつかない
まず分かりやすいデメリットから書きます。
クレカ積立の上限は月10万円です。240万円を一括で入れる方法は、カード払いには存在しません。
つまり成長投資枠の240万円には、ポイントが1円分もつきません。
12か月に分けてクレカ積立にすれば0.5%がつく計算になりますが、枠の都合でつみたて投資枠と合わせて月10万円が上限です。両立はしません。
| 年初一括 | 毎月クレカ積立 | |
|---|---|---|
| ポイント | なし | 0.5% |
| 市場に入るタイミング | 年初にまとめて | 12か月に分散 |
それでも年初に入れている理由
ポイントがつかないと分かっていて、それでも年初にまとめています。
理由はひとつです。早く入れたほうが、長く投資できるからです。
リターンは、市場に置いている時間の長さに影響されます。同じ240万円でも、1月に入れるのと12月に入れるのでは、その年のあいだ市場にいる時間が違います。入れられるお金があるなら、早く入れたほうが筋が通ると考えました。
一括と積立のどちらが有利かは、昔から議論のあるところです。過去のデータを使った調査では一括が上回ったケースのほうが多かった、という話をよく見かけます。ただしその多くは市場が長期的に上昇した期間のデータです。私も原典まで確認できていないので、断定はしません。
実際、年初に入れた直後に暴落すれば、結果は逆になります。どちらが正解かは後からしか分かりません。
私が選んだのは、0.5%のポイントより、11か月分の時間のほうだった、ということです。年6,000円相当のポイントと、240万円を1年近く早く市場に置けること。後者のほうが大きいと判断しました。
これは私の判断で、おすすめしているわけではありません。暴落が怖いと感じるなら、分けて入れるほうが続けやすいと思います。
つみたて投資枠のほうはドルコスト平均法
一方、つみたて投資枠の月10万円は、意図的に毎月に分けています。
ドルコスト平均法です。価格が高いときは少なく、安いときは多く買うことになるので、購入価格が平準化されます。高値でまとめて買ってしまうリスクを避けられます。
つまり同じ年のなかで、2つの方法を同時に使っていることになります。
| 成長投資枠 240万円 | つみたて投資枠 月10万円 | |
|---|---|---|
| 方法 | 年初に一括 | 毎月(ドルコスト平均法) |
| 狙い | 時間を長く取る | 購入価格を平準化する |
| ポイント | なし | 0.5%(年6,000円相当) |
分けていたのは、口座だけではなかった
書き出してみて気づいたことがあります。
私が分けていたのは、口座だけではありませんでした。
- 見る口座と、見ない口座
- 一括で入れるお金と、毎月に分けるお金
そしてもうひとつ、月10万円という金額には理由があります。
楽天証券のクレカ積立でポイントがつく上限が、月10万円だからです。
つみたて投資枠を月10万円にしているのは、ドルコスト平均法で買いたいという理由だけではありません。ポイントがつく範囲に合わせてあるということです。
整理すると、こうなります。
- ポイントが取れる範囲(月10万円)は、取れる形にした
- ポイントが取れない範囲(成長投資枠240万円)は、あきらめて時間を優先した
書き出すまで、自分でもここまで整理できていませんでした。口座を分けただけでなく、お金の入れ方も2つに分けていたことになります。
本当は年初に360万円入れることもできる
ここまで書いて、自分の理屈に穴があることに気づきました。
「早く入れたほうが長く投資できる」という理由で240万円を年初にしているなら、つみたて投資枠の120万円も年初に入れたほうが筋が通ります。設定次第で、年初に360万円まとめて入れることもできるようです。
していません。理由は2つです。
- 月10万円のクレカ積立なら、年6,000円相当のポイントがつく。年初にまとめると、これがゼロになる
- 設定を変えるのが面倒
1つ目は計算できる話です。問題は2つ目でした。
「面倒だからやっていない」というのが、正直なところです。年6,000円のポイントを理由にできますが、それが本当に決め手かというと怪しい。設定変更が5分で済むと分かっていても、たぶん私はやりません。
👉 論理で決めているつもりでも、面倒かどうかがかなり効いています。
最近、エンディングノートが書けなかった話や兄と共有名義の空き家に手をつけられない話を書きました。どちらも「やったほうがいいと分かっているのに動けない」という話でした。
投資でも同じことが起きていた、ということになります。やらない理由に、ちゃんとした理屈がつけられてしまう。ここは気をつけたいところです。
よくある質問
証券口座の使い分けについて、調べたり考えたりした点をまとめます。
証券口座は複数持ってもいいのですか
持てます。金融機関の数に制限はありません。ただしNISA口座は1人1つで、1つの金融機関でしか開けません。つみたて投資枠と成長投資枠は、同じNISA口座の中にあります。iDeCoも1人1口座です。複数持てるのは課税口座(特定口座・一般口座)の部分になります。
口座を分けると管理が面倒ではありませんか
増やす目的ではなく、役割を決めて分けるなら、かえって考えることは減ります。私の場合は「何もしない口座」と「考える口座」に分けているので、開く口座が決まれば用事も決まります。ただし確定申告が必要な場合は、口座ごとに書類を確認する手間はあります。
iDeCoの掛金はクレジットカードで払えますか
払えません。口座振替のみです。国民年金基金連合会が運営する制度のため、支払い方法が限定されています。クレジットカードや電子マネーは使えないので、クレカ積立のようなポイント還元は期待できません。
iDeCoの金融機関はどこを見て選べばいいですか
手数料のうち、金融機関によって変わるのは運営管理手数料だけです。加入時の2,829円と毎月の171円はどこでも同じです。したがって比較する意味があるのは運営管理手数料と、選べる商品のラインナップになります。
iDeCoの手数料はいつ上がりますか
国民年金基金連合会の手数料が、2027年1月26日の口座引落し分から1回105円から月120円に変わります。合計では月171円から186円です。これまでは拠出した月だけかかっていたため、年に1回まとめて拠出している人は実質的な負担が増えます。
楽天カードと楽天キャッシュは併用すべきですか
毎月の積立額によります。クレカ積立の上限は月10万円、楽天キャッシュは月5万円で、併用すれば月15万円まで積み立てながらポイントを受け取れます。積立が月10万円以下なら、カードの枠だけで収まるため併用する意味はありません。
長期の積立を見ないようにするコツはありますか
私は口座を分けました。同じ画面に並んでいると、見るつもりがなくても目に入るためです。意志で我慢するより、見る理由をなくすほうが続けやすいと感じています。ただしこれは私の方法で、合う合わないはあると思います。
まとめ|意志より仕組み
証券口座を2つに分けている理由と、そこで分かったことを書きました。
- 楽天証券はほったらかし用、SBI証券は売買用。役割を決めて分けている
- 分けた理由は、長期の積立を見ないで済む場所に隔離するため
- 同じ画面に並ぶと目に入る。目に入れば考える。考えればやめたくなる
- 55歳は「やめる理由」がもっともらしく作れてしまう年齢なので、そこを仕組みで防いだ
- 楽天証券を選んだ動機はポイントだったが、iDeCoでは年36ポイントしか付かなかった
- 効いていたのは運営管理手数料0円のほう。結果的に損はしていなかった
- 楽天キャッシュ経由をやめたが、月10万円はカード枠に収まるので損失はゼロだった
- 成長投資枠240万円は年初一括。ポイントを捨てて時間のほうを取った
- つみたて投資枠の月10万円は、ドルコスト平均法であり、ポイントがつく上限に合わせた金額でもある
- ただし理屈を徹底するなら年初に360万円入れるほうが速い。していない理由は面倒だから
書いていて気づいたのは、判断の理由を後から確認したのは今回が初めてだということです。
ポイントで選んだ、分かりにくいからやめた、なんとなく損した気がしていた。どれも計算していませんでした。調べてみたら、たまたま悪くない選択になっていたというだけでした。
運がよかったと思います。次も同じとは限りません。
仕組みで守るという話を書きましたが、仕組みを作ったあとに一度は検算しておくほうがよさそうです。今回がその検算でした。
もうひとつ、検算して分かったことがあります。面倒かどうかが、思っていたより判断に効いているということです。
年初に360万円入れたほうが理屈は通る。でもやっていない。ポイントを理由にできますが、たぶん本当の理由は設定変更が面倒だからです。
終活のことを書いていたときも同じでした。やったほうがいいと分かっているのに動かない。そのたびに、それらしい理由をつけていました。
投資でも終活でも、同じところでつまずいているというのが、今回いちばんの発見かもしれません。
同じように口座の使い分けで迷っている方の参考になればうれしいです。

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